小学校の先生にとって、一番恐れられているものが学級崩壊です。
本記事では、文部科学省の資料からわかる学級崩壊の原因について説明していきます。先に原因を知っておいて学級崩壊にならないように気をつけましょう。
- 1 学級崩壊の原因
- 2 ①教師の学級経営が柔軟性を欠いている(74学級)
- 3 ②授業の内容と方法に不満を持つ子どもがいる(65学級)
- 4 ③いじめなどの問題行動への適切な対応が遅れた(38学級)
- 5 ④校長のリーダーシップや校内の連携・協力が確立していない(30学級)
- 6 ⑤学校と家庭などの対話が不十分で信頼関係が築けず対応が遅れた(27学級)
- 7 ⑥特別な教育的配慮や支援を必要とする子どもがいる(26学級)
- 8 ⑦必要な教育を家庭で受けていない子どもがいる(21学級)
- 9 ⑧校内での研究や実践の成果が学校全体で生かされていなかった(16学級)
- 10 ⑨家庭のしつけや学校の対応に問題があった(14学級)
- 11 ⑩就学前教育との連携・協力が不足している(11学級)
- 12 まとめ
学級崩壊の原因
文部科学省の調査によると、小学校の学級崩壊の原因は10のケースに分けられるとのことです。
うまく機能しない状況にある学級(いわゆる学級崩壊)102学級を分析し、事例を10ケースに分けました。
学級崩壊のケース | 学級数 |
---|---|
教師の学級経営が柔軟性を欠いている | 74 |
授業の内容と方法に不満を持つ子どもがいる | 65 |
いじめなどの問題行動への適切な対応が遅れた | 38 |
校長のリーダーシップや校内の連携・協力が確立していない | 30 |
学校と家庭などの対話が不十分で信頼関係が築けず対応が遅れた | 27 |
特別な教育的配慮や支援を必要とする子どもがいる | 26 |
必要な教育を家庭で受けていない子どもがいる | 21 |
校内での研究や実践の成果が学校全体で生かされていなかった | 16 |
家庭のしつけや学校の対応に問題があった | 14 |
就学前教育との連携・協力が不足している | 11 |
引用:進む「教育改革」:文部科学省
※1学級あたり複数のケースに当てはまります。
それぞれのケースについて細かく説明していきます。
①教師の学級経営が柔軟性を欠いている(74学級)
小学校の学級崩壊の原因として、102学級中74学級も占めている「教師の学級経営が柔軟性を欠いている」という事例です。
いわゆる「担任のせい」ということでしょうか。
もちろん、先生と子どもの相性はあります。どちらも人間ですのでうまくいかないところがあります。
でも、それだけでなく先生側の「柔軟性」が欠けている場合、学級崩壊につながりやすくなるので注意しましょう。
先生として、ブレない信念というのも大切ですが、周りの声や子どもたちの声、保護者さんの声に耳を傾けて柔軟に対応してみましょう。
文部科学省の対応策として、以下のように述べられています。
学級間の情報交換などによって、問題状況に関する共通理解を図ること、学級担任の指導力を高めるための適正な校内人事に配慮すること
引用:進む「教育改革」:文部科学省
「先生ひとりで悩まずに、みんなで情報交換して対策しましょう」ということですね。
②授業の内容と方法に不満を持つ子どもがいる(65学級)
小学校の時間の大半を占めるのが、授業の時間です。その授業の時間がつまらなかったり、わかりにくいものだと、子どもたちは先生の話を聞かなくなります。
先生が黒板の前で一方的に話すような授業形態でなく、グループ学習などを取り入れて子どもたちが主体的に学べるような授業形態にかえてみましょう。
先生の本来の仕事は勉強を教えることです。授業力を身につけることが何よりも大切です。何歳になっても常に勉強し続け、授業力をアップデートしていきましょう。
文部科学省の対応策として、以下のように述べられています。
授業方法の柔軟な選択を行うこと、そのため校内研修等の充実やティーム ・ティーチング、体験的な活動など多様な工夫を行うこと、授業時間以外の言葉かけの工夫も大切であること
引用:進む「教育改革」:文部科学省
「校内研修を行なって、子どもが退屈しない授業づくりをしましょう」ということですね。
③いじめなどの問題行動への適切な対応が遅れた(38学級)
小学校のクラスの中で、いじめや反抗など問題行動への対応が遅れたときに、学級崩壊に陥りやすくなります。
いじめはもちろんいけないことです。それは子どもたちもよくわかっています。
その問題に対して先生が曖昧な対応をしていると、子どもから先生に対する信頼感はどんどんなくなってしまいます。
そして、だんだんルールが曖昧になり、ルールを守らなくてもいい風潮になって学級崩壊になります。
いじめはもちろん、さまざまな問題行動に対して迅速に適切に対応していきましょう。
文部科学省の対応策として、以下のように述べられています。
いじめに対しては子どもの心理の理解に努め早期の適切な対応をするなど、根本的な問題を探り当て、組織的に対応すること
引用:進む「教育改革」:文部科学省
「とにかく迅速に適切に対応しましょう」ということですね。
④校長のリーダーシップや校内の連携・協力が確立していない(30学級)
校長先生をリーダーとして、職員室内での先生間の雰囲気はとても重要です。
職員室の雰囲気がちょっと険悪だったり、相談しにくいような雰囲気だったりすると、若手の先生は困り事があっても相談できない状況に陥ってしまいます。
その結果、学級で起きていることをうまく情報共有できずに気づいたら学級崩壊に…ということにもなりかねません。
意外と職員室の雰囲気って大切です。
文部科学省の対応策として、以下のように述べられています。
教員の異動直後は校務分掌などで経営的配慮をし、問題状況に対しては、校長はリーダーシップを発揮して、職員の間に相談しやすい雰囲気づくりを 進めること
引用:進む「教育改革」:文部科学省
「校長先生の手腕にかかっている」ってことですね。
⑤学校と家庭などの対話が不十分で信頼関係が築けず対応が遅れた(27学級)
学校と家庭との連携はとても大切です。学校は、保護者さんにとって大切な子どもを預かっているわけです。
学校であった出来事など、しっかり学校と家庭が連携して情報共有することが重要です。
ましてや、子どもにとって悪い出来事が起きたとき、学校からの連絡がないと、保護者さんは不信感を持ってしまいます。
そしてそれは子どもにも伝わり、学級全体にも伝わり、学級崩壊に繋がってしまいます。
学校と家庭の連携は大切にしましょう。
文部科学省の対応策として、以下のように述べられています。
学校の説明責任を果たすこと、保護者との対話や情報交換を工夫するなど、一体となって問題解決に取り組むこと、地域や教育委員会等との連携を推進すること
引用:進む「教育改革」:文部科学省
「学校での出来事は家庭に連絡する義務がありますよ」ってことですね。
こちらの記事では、保護者から嫌われてしまう先生の特徴を紹介しています。参考にしてみてください。
気をつけて対応していても、頑張っていても、保護者に嫌われてしいまう先生もいます。保護者に嫌われてしまうと、その影響は子供にも伝わり、学級経営がままならなくなってしまう危険性もあります。 いったい保護者に嫌われてしまう先生ってどんな先[…]
⑥特別な教育的配慮や支援を必要とする子どもがいる(26学級)
近年では、特別な教育的配慮や支援を必要としている子どもたちが増えています。それにともなって、特別支援学級が増えていますが、すべての子どもたちがそこに所属できるわけでなく、通常学級で生活する子どもたちもいます。
そんな子どもたちがクラスにいるということを意識して、教育的配慮を意識しながら学級経営をしていくことが必要になってきています。
もちろん大変なことです。特別支援学級の先生たちと連携しながら上手に関わっていきましょう。
文部科学省の対応策として、以下のように述べられています。
教育的配慮が必要かどうかの的確な判断をすること、息の長い取組のための体制づくりをすること、一人一人の子どもの「違い」を生かす学級づくりをすること
引用:進む「教育改革」:文部科学省
「子ども一人一人を大切に」ってことですね。
⑦必要な教育を家庭で受けていない子どもがいる(21学級)
子どもの個性と同じように、家庭にもさまざまな家庭環境があります。いわゆるネグレクトが生じている家庭もあり、その子どもはどうしても学校でも荒れてしまいます。
しかし、家庭で十分な愛情を受けられていないその子どもの気持ちに寄り添ってあげましょう。子どもを正すのではなく、きちんと受け入れ、必要な支援を施してあげます。
それはもちろん担任一人でやるには手が足りません。関連機関と協力しながら子どものサポートをしてあげましょう。
文部科学省の対応策として、以下のように述べられています。
子どもの教育環境を的確に把握し、関係機関との間に連携・協力関係を築いたり、子どもとの間の信頼関係を築くこと
引用:進む「教育改革」:文部科学省
「子どもを助けるために、関連機関と協力しましょう」ってことですね。
⑧校内での研究や実践の成果が学校全体で生かされていなかった(16学級)
学校内での研究や実践の成果をきちんと共有できているでしょうか。学校のルールがきちんと学級にまでおりてきているでしょうか。
意外かもしれませんが、それが学級崩壊にも繋がってしまいます。
クラスは、担任の支配力がどうしても大きく、担任独自のルールを設定してしまいがちです。いわゆる「学級王国」状態ですね。
その場はうまくいったとしても、学年が変わって担任が変わったとき、後から担任になった先生にとってはかなり苦しいものになります。
また、子どもたちにとってもいきなりルールが変わって混乱してしまいます。
その学年の切り替えがうまくいかないと、学級崩壊に繋がってしまいます。
そのためにも、学校全体で取り組むことにはきちんと取り組む必要があります。ある意味誰が担任しても、大丈夫なようなルールづくりが必要です。
文部科学省の対応策として、以下のように述べられています。
校内の組織体制の充実を図ること、ティーム・ティーチングなど教授・学習組織の工夫を行い、それを校内で学び合うこと
引用:進む「教育改革」:文部科学省
「校内全体で一つのことに取り組みましょう」ってことですね。
⑨家庭のしつけや学校の対応に問題があった(14学級)
何事にも間違いはあります。それは教育でも同じことです。
子どもに対する家庭のしつけや、学校での子どもへの対応に問題があった場合、学級崩壊につながりかねません。
保護者さんのしつけに対しては、学校からというよりも、地域との連携が必要になってきます。
学校の対応に関しては、担任一人で考えるのではなく、同僚の先生や管理職の先生と相談しながら対応していく必要があります。
一人だけで対応しないようにして、間違いのないように注意していきましょう。
文部科学省の対応策として、以下のように述べられています。
保護者の子育て状況を把握し適切に対応すること、学校と地域の協力関係づくりを進めること、早期の対応や柔軟な学校運営に努めること
引用:進む「教育改革」:文部科学省
「問題を見つけたら早めに対応して柔軟に対応しましょう」ってことですね。
⑩就学前教育との連携・協力が不足している(11学級)
低学年における学級崩壊のケースですが、幼稚園や保育園など就学前教育との連携・協力が不足している場合、学級崩壊につながりやすくなります。
小学1年生のクラス分けは、幼稚園や保育園での情報をもとに構成されます。そこでうまく連携できないと、手がかかる子どもの割合がクラスによって大きく異なってしまいます。
そうでなくても1年生はかなり手がかかります。少しでも、バランスよくクラス分けができるよう、幼稚園・保育園と密に情報交換していきましょう。
文部科学省の対応策として、以下のように述べられています。
子どもの実態に即した学級づくりを進めること、就学前教育との連携・協力を進め、必要な情報を交換すること
引用:進む「教育改革」:文部科学省
「幼稚園・保育園としっかり連携しましょうね」ってことですね。
まとめ
ここまで、文部科学省の資料からわかる学級崩壊の原因について説明してきました。
もちろん、これらの原因が全てではありませんが、代表的な原因であることは間違いありません。
あらかじめ学級崩壊の原因を確認しておいて、自分のクラスが学級崩壊に向かわないよう、注意していきましょう。