夏の間はそうでもなかったのに、9月に入ったとたん、床が毛だらけになる。撫でただけで手のひらが毛まみれになる。掃除機をかけた翌日にはもう毛玉が転がっている。
これは秋の換毛期です。異常ではありません。ただし「放っておけば終わる」ものでもなくて、この時期にきちんとケアしておくかどうかで、抜け毛の量も、犬の快適さも、部屋の状態もかなり変わります。
犬の換毛期はいつ?
換毛期は年に2回、春と秋にあります。
- 春(3〜5月頃):密度の高い冬毛が抜け、涼しい夏毛に入れ替わる
- 秋(9〜11月頃):薄い夏毛が抜け、寒さに備えた冬毛に入れ替わる
秋の換毛期は、冬に向けて「アンダーコート(下毛)」を増やすための入れ替えです。春に比べると期間が長めで、だらだらと続く傾向があります。
スイッチは気温ではなく「日照時間」
意外に思われるかもしれませんが、換毛のきっかけは気温ではなく日照時間の変化です。日が短くなってきたことを体が感じ取り、冬毛の準備を始めます。
これを知っておくと、次のことが説明できます。室内飼いで一年中エアコンが効いていて、夜も照明が明るい環境では、換毛期がぼやけて年中少しずつ抜け続けることがあります。「うちの子、換毛期っていつなんだろう」と感じている場合、この可能性があります。
これ自体は病気ではありませんが、だらだら抜けるぶんケアが必要な期間も長くなります。
換毛期がある犬種・ほとんどない犬種

ここが犬種によって大きく違うところです。「うちの犬は全然抜けない」という声と「毎年ゴミ袋いっぱい抜ける」という声が両方あるのは、被毛の構造が違うからです。
ダブルコート=換毛期がはっきりある
上毛(オーバーコート)と下毛(アンダーコート)の二重構造を持つ犬種です。換毛期に大量に抜けるのは、このアンダーコートです。
柴犬、秋田犬、ゴールデンレトリバー、ラブラドールレトリバー、シベリアンハスキー、コーギー、ポメラニアン、シェットランドシープドッグ、ボーダーコリー、ジャーマンシェパード、日本スピッツ、サモエド、チワワ、パグ など。
シングルコート=換毛期がほとんどない
アンダーコートを持たない、または非常に少ない犬種です。毛は少しずつ生え替わるので、換毛期という形では現れません。
トイプードル、マルチーズ、ヨークシャーテリア、シーズー、ミニチュアシュナウザー、イタリアングレーハウンド など。
シングルコートの犬は抜け毛が少ない代わりに、毛が伸び続けるため定期的なカットが必要です。また寒さに弱いので、冬は服やヒーターでの調整が必要になります。
秋の換毛期にやるべきブラッシング

頻度は「毎日」が基本
換毛期は毎日、できれば1日1回、抜けが多い時期は朝晩2回が理想です。
面倒に感じるかもしれませんが、ここでブラッシングをサボると、抜けた毛が被毛の中に留まって毛玉になります。毛玉は皮膚を引っ張って痛みの原因になりますし、通気を悪くして皮膚トラブルを招きます。結果的に、掃除の手間も動物病院に行く手間も増えます。
1回5分でいいので、毎日触るほうが結局は楽です。
道具の選び方
| 道具 | 向いている犬・用途 |
|---|---|
| スリッカーブラシ | ダブルコートの抜け毛除去。換毛期の主力 |
| コーム(くし) | 仕上げと毛玉チェック。ブラッシング後に通す |
| ラバーブラシ | 短毛種。マッサージ効果もあり |
| ピンブラシ | 長毛種のもつれをほぐす |
| アンダーコート除去ツール | 大量に取れるが使いすぎ注意(後述) |
まず揃えるなら、スリッカーブラシとコームの2本で十分です。
ブラッシングの手順
- 全体を手で撫でて、毛玉やもつれがないか確認する
- 毛の流れに沿って、背中→体側→おしりの順にとかす
- 脇の下、内もも、耳の後ろ、しっぽの付け根など、毛玉ができやすい部位を丁寧に
- 最後にコームを通して、抜け残りともつれを確認する
コツは根元から少しずつとかすことです。表面だけをなでても、抜けているのは下のアンダーコートなので取れません。片手で毛を持ち上げて、下の層から少しずつ進めます。
嫌がる場合は、機嫌のいいときに短時間から始めて、終わったら褒める・おやつをあげるを繰り返すと慣れていきます。
アンダーコート除去ツールの使いすぎに注意
「面白いほど取れる」タイプのアンダーコート除去ツールは、換毛期の強い味方ですが、使いすぎると問題が起きます。
刃で毛をすき取る構造のため、長時間・強い力で使うと、抜けるべきでないオーバーコートまで削ってしまい、被毛の質が落ちたり、皮膚を傷つけたりします。
- 1回あたり数分程度にとどめる
- 同じ場所を何度も往復させない
- 力を入れず、皮膚に押しつけない
- 皮膚が赤くなったらすぐやめる
「まだ取れるから」と続けたくなりますが、換毛期はどうせ数週間続きます。一度で終わらせようとしないことです。
シャンプーのタイミング
シャンプーには、浮いている抜け毛をまとめて落とす効果があります。換毛期の入り口で1回入れておくと、その後のブラッシングが楽になります。
ポイントはシャンプー前に必ずブラッシングをしておくことです。毛玉があるまま濡らすと、毛玉が締まってほどけなくなります。
洗ったあとは、地肌までしっかり乾かしてください。ダブルコートの犬は下毛が乾きにくく、生乾きのままだと皮膚トラブルの原因になります。
頻度は月1〜2回程度が一般的です。洗いすぎると皮膚に必要な脂分まで落ちてしまうので、抜け毛が気になるからといって毎週洗うのは避けたほうがいいです。
部屋の抜け毛対策
掃除機より先に、粘着ローラーとフロアワイパー
いきなり掃除機をかけると、排気で毛が舞い上がって部屋中に広がります。先にフロアワイパー(ドライシート)で床の毛を集め、ソファやカーペットは粘着ローラーで取る。そのあとに掃除機、という順番のほうが効率的です。
静電気を抑える
秋から冬にかけて空気が乾くと、静電気で毛が壁や家具に張り付きます。加湿器で湿度を保つと、毛が床に落ちやすくなって回収が楽になります。
洗濯物に付いた毛
犬用のブランケットやカバーを洗う前に、乾燥機に5分ほどかけると毛がフィルターに集まります。そのまま洗うと洗濯槽に毛が回り、他の衣類にも付きます。
空気清浄機のフィルター
換毛期は普段よりフィルターの目詰まりが早くなります。「最近効きが悪い」と感じたら、時期的にフィルター清掃のタイミングです。
換毛期の抜け毛ではないかもしれないサイン
秋に抜け毛が増えるのは自然なことですが、次のような症状を伴う場合は、換毛期とは別の原因が隠れていることがあります。
- 左右対称に毛が薄くなる(ホルモン系の疾患でみられることがあります)
- 円形に毛が抜ける、フケが多い、強いかゆみ(皮膚炎や真菌感染など)
- 地肌が見えるほど一部だけ抜ける
- 掻きむしって皮膚を傷つけている
- 抜け毛に加えて、元気がない・食欲が落ちた・水をよく飲む・体重が変化した
換毛期の抜け毛は基本的に全身からまんべんなく抜けて、地肌が露出することはありません。左右対称の脱毛や部分的な脱毛、皮膚の異常を伴う場合は、自己判断せず動物病院で診てもらってください。
食事は関係ある?
被毛はタンパク質(ケラチン)でできているため、良質なタンパク質が不足すると被毛の状態に影響します。皮膚や被毛の健康維持にはオメガ3脂肪酸なども関わるとされています。
ただし、換毛期そのものは生理現象なので、食事で抜け毛を止めることはできません。「これを与えれば抜け毛が減る」といった説明には注意が必要です。総合栄養食をきちんと与えていれば、基本的には足りています。
サプリメントの追加を検討する場合は、かかりつけの獣医師に相談してから決めるのが確実です。
まとめ
- 換毛期は春(3〜5月)と秋(9〜11月)の年2回。秋は冬毛を増やすための入れ替え
- スイッチは気温ではなく日照時間。空調と照明が効いた室内飼いでは換毛期がぼやけることがある
- 大量に抜けるのはダブルコートの犬種。トイプードルなどシングルコートには換毛期がほぼない
- 換毛期のブラッシングは毎日5分。表面ではなく根元からとかす
- まず揃えるならスリッカーブラシとコームの2本
- アンダーコート除去ツールは効果が高いぶん、使いすぎると被毛と皮膚を傷める
- シャンプーは前にブラッシング、後は地肌まで乾かす。頻度は月1〜2回程度
- 掃除は「フロアワイパー・粘着ローラー → 掃除機」の順が効率的
- 左右対称の脱毛、円形脱毛、強いかゆみ、地肌が見える場合は動物病院へ

