換毛期は春と秋の年2回。そう聞いていても、春のほうが圧倒的に大変に感じる人が多いと思います。
気のせいではありません。 春は実際に抜ける量が多く、しかも部屋に広がりやすい。理由がはっきりしているので、先にそこから説明します。
春の抜け毛が多い理由

春(3月から5月ごろ)は冬毛から夏毛への生え替わり、秋(9月から11月ごろ)は夏毛から冬毛への生え替わりです。
抜けるのは、春は冬毛、秋は夏毛。ここに差があります。
冬毛は寒さをしのぐためのもので、密にびっしり生えています。 その密な毛が一気に抜けるので、春は量が多い。換毛期の抜け毛は通常の5倍から10倍といわれ、猫によっては10倍以上になることもあります。
舞いやすさも違う
もうひとつ、冬毛は夏毛より細くて柔らかいという違いがあります。
軽いので、空中に舞い上がりやすい。 同じ量が抜けても、春の毛は床に落ちずに部屋じゅうを漂います。服につく、飲み物に浮く、鼻がむずむずする。「春だけやたら大変」という体感は、量の多さと舞いやすさが重なった結果です。
冬毛がどれだけ働いていたかは 犬・猫の冬の寒さ対策 で書いた通りで、あの密度がまるごと抜けると考えれば納得がいきます。
換毛期がはっきりしない子もいる
「うちの子は換毛期らしい換毛期がない」という場合、原因は2つ考えられます。
毛の構造の違い
- ダブルコート … 上毛と下毛の二層。換毛期がはっきりしていて、抜け毛が多い
- シングルコート … 一層だけ。季節の変化がゆるやかで、年間を通して少しずつ抜ける
猫の多くと、柴犬・コーギー・ゴールデンレトリバーなどはダブルコートです。プードルやヨークシャーテリアはシングルコートで、換毛期の実感が薄くなります。
抜け毛が少ないのは体質ではなく、毛の構造の違いということです。
室内飼いは時期がずれる
換毛のスイッチを入れているのは、日照時間と気温です。
一年中エアコンで快適な室内にいて、自然光を浴びる時間が短いと、そのリズムが乱れます。結果として、一年中少しずつ抜け続ける、あるいは春でも秋でもない時期にどっと抜けることが起きます。
「時期がおかしい」と心配になりますが、室内飼いでは珍しくありません。気になるなら、窓際に日の当たる居場所をつくると整いやすくなります。
ブラッシングの頻度

対策の中心はこれです。抜ける前に取るのがいちばん効きます。
- 換毛期 … 毎日が理想
- ダブルコート・長毛 … 朝と夕方の2回、1回5分程度に分ける
- 通常の時期 … 短毛は1日1回、長毛は朝晩2回
1回で長くやるより、短く分けるほうが効果的です。嫌がられにくく、皮膚への負担も減ります。
やりすぎは逆効果
ここを知らずに、良かれと思って傷めてしまうことがあります。
- 力を入れて強く引っ張らない。 皮膚を傷めます
- やりすぎると毛が薄くなることがあります
- アンダーコートをごっそり取るタイプのブラシは、週1〜2回までにとどめる
- 毛の流れに沿って動かす
- 嫌がったら中断する。 1回で終わらせようとしない
「取れれば取れるほどいい」ではありません。下毛は本来、体温を保つために必要なものです。
ブラシの使い分け
- 短毛 … ラバーブラシ(ゴム製)。マッサージにもなります
- 長毛 … スリッカーブラシでほぐしてから、コームで仕上げる
- 換毛期の下毛 … 専用のものを、頻度を守って
長毛の子はコームまでやってください。 スリッカーだけだと表面しか取れず、内側に毛が溜まって毛玉になります。
シャンプーは増やしすぎない
抜け毛が気になると洗いたくなりますが、洗いすぎは皮脂を奪って乾燥を招きます。
目安は多くても月3回まで。低刺激で保湿してくれるものを選んでください。
飲み込む毛が増える時期
春に増えるのは、床の毛だけではありません。体の中に入る毛も増えます。
猫は毛づくろいで毛を飲み込みます。ふだんは便と一緒に出たり吐いたりして処理されますが、換毛期は量が増えるぶん、胃腸にとどまりやすくなります。
気をつけたいサイン
こうした様子が見られたら、動物病院で診てもらってください。
- 吐こうとする素振りを繰り返すのに、何も出ない
- 便秘が続く
- 食欲がない
- お腹を触られるのを嫌がる、痛がる
- ぐったりして動かない
ここで原因を決めつけないでください。 似た症状はほかの理由でも起きます。判断は獣医師に任せるのが確実です。
できるのは予防のほうで、やることは2つだけです。ブラッシングで飲み込む毛を減らすこと、そして水を飲む量を保つこと。水分が足りないと便が硬くなります。水を飲ませる工夫は 猫が冬に水を飲まない にまとめたものが、そのまま春にも使えます。
換毛期ではない抜け毛もある
換毛期の抜け毛は、全体がまんべんなく薄くなるのが特徴です。
こういう抜け方は、換毛期とは別に考えてください。
- 一部だけごっそり抜けて地肌が見える
- 左右対称に抜けている
- かゆがって掻きむしる、舐め続ける
- フケが多い、皮膚が赤い
季節だからと様子を見続けないことが大事です。気になったら早めに相談してください。
部屋の毛を減らす
掃除にも、やる順番があります。
ほうきを使わない
ほうきで掃くと、軽い冬毛は舞い上がります。 集めたつもりが、部屋に撒いているだけになります。
乾いたフロアワイパー(ペーパーモップ)で先に絡め取る。 それから掃除機をかける。この順番だと、舞う量がかなり減ります。
布ものはコロコロ
カーペット、ソファ、布団、カーテン。布に絡んだ毛は掃除機では取りきれません。 粘着クリーナーのほうが確実です。
舞わせない工夫
- ブラッシングは浴室やベランダでやると、部屋に広がりません
- ブラッシング前に軽く湿らせるか、静電気を抑えるものを使うと飛び散りにくくなります
- 空気清浄機は舞っている毛には効きますが、床に落ちた毛には効きません。 掃除の代わりにはなりません
夏の準備でもある
換毛は、次の季節に合わせて体を作り替える作業です。
冬毛が抜けきらずに残っていると、熱がこもります。 春にしっかり毛を落としておくことは、そのまま夏の暑さ対策になります。熱中症への備えは 犬と猫の夏の熱中症サインと室内でできる対策 にまとめました。
秋の換毛期については 犬の換毛期はいつ?秋の抜け毛対策とブラッシングのコツ に書いています。春と秋では、抜ける毛も対策の重点も違います。
まとめ
- 春(3月〜5月)は冬毛から夏毛への生え替わり。秋は夏毛から冬毛
- 春のほうが抜け毛が多い。 冬毛は密にびっしり生えているため
- 換毛期の抜け毛は通常の5〜10倍。10倍以上になることもある
- 冬毛は細くて柔らかいので空中に舞いやすい。 量と舞いやすさが重なる
- ダブルコートは換毛期がはっきり、シングルコートは年間を通して少しずつ
- 室内飼いは日照時間と気温のリズムが乱れ、時期がずれることがある
- ブラッシングは換毛期は毎日。ダブルコート・長毛は朝晩5分ずつ
- 1回で長くやるより、短く分ける
- 強く引っ張らない。やりすぎると毛が薄くなる
- 下毛をごっそり取るブラシは週1〜2回まで
- 短毛はラバーブラシ、長毛はスリッカーのあとコームで仕上げる
- シャンプーは多くても月3回まで。洗いすぎは乾燥を招く
- 換毛期は飲み込む毛も増える。ブラッシングと水分で減らす
- 吐く素振りを繰り返す・便秘・食欲がない・お腹を痛がるなら受診する
- 一部だけごっそり、左右対称、かゆみ、フケは換毛期とは別に考える
- ほうきは毛を舞わせる。 乾いたフロアワイパーで先に取ってから掃除機
- 布ものは粘着クリーナー。掃除機では取りきれない
- ブラッシングは浴室やベランダで。空気清浄機は掃除の代わりにならない
- 冬毛が残ると熱がこもる。春の換毛は夏の暑さ対策でもある

