レンジで温めたさつまいもが、なんだか粉っぽくて甘くない。それなのに、店で買った焼き芋は蜜が出るほど甘い。
品種の違いだけではありません。加熱のしかたで、同じ芋でも甘さが変わります。
理由は単純で、甘さは焼いている途中に作られるからです。ここを知ると、家でも店に近いものが作れます。
甘くなる仕組み

さつまいもの甘さの正体は、加熱中にデンプンが糖に変わることです。
芋の中には、デンプンを糖に分解する酵素が入っています。この酵素が最もよく働くのが、60〜65℃あたりとされています。つまり、こうなります。
- 60〜65℃を長く保つ → 酵素が働き続けて、糖がどんどん作られる → 甘い
- 一気に高温まで上げる → 酵素が働く前に失活してしまう → 甘くない
レンジで数分チンして甘くないのは、この温度帯を一瞬で通り過ぎるからです。覚えることはひとつだけです。低温で、じっくり。
焼き方

オーブン(いちばん確実)
160℃に予熱して、1時間20〜30分が目安です。
- 洗って、濡れたままアルミホイルで包む(乾燥を防ぐ)
- 天板に並べて焼く
- 太いものは時間を長めに
低めの温度で長く加熱するので、酵素が働く時間をしっかり取れます。手間はかからないのに、いちばん甘くなります。
電子レンジ(早いが、コツが要る)
600Wではなく、200Wを使ってください。
- 洗って、濡らしたキッチンペーパーで包み、その上からラップ
- 200Wで8〜15分(芋のサイズによる)
- 竹串がすっと通れば完成
弱いワットでゆっくり加熱するのが要点です。600Wで数分だと、温度が急に上がって甘くなりません。急いでいるときは、600Wで1〜2分温めてから200Wに切り替えると時間を短縮できます。
トースター
レンジとの合わせ技が現実的です。
- レンジ200Wで5〜8分、ある程度火を通す
- アルミホイルで包んでトースターで20〜30分
表面が香ばしくなるので、焼き芋らしい仕上がりになります。
炊飯器
皮ごと入れて、水を1〜2cmほど張り、通常炊飯するだけです。放っておけるのが利点で、失敗もしにくい。ねっとり系の仕上がりになります。
フライパン
濡らしたキッチンペーパーで包んでアルミホイルで巻き、蓋をして弱火で40分ほど。途中で転がします。オーブンがない家でも、これで近いものが作れます。
買ってすぐ焼かないほうがいい
意外に思うかもしれませんが、掘りたてより、少し寝かせたほうが甘くなります。
貯蔵している間にも、芋の中では水分が抜け、デンプンが糖に変わっていきます。買ってから1〜2週間置くと、甘みが増します。
スーパーで買うものは既にある程度熟成されていますが、直売所や芋掘りで手に入れたものは、すぐ食べずに置いておくほうがおいしくなります。
保存は常温。冷蔵庫はNG
ここがいちばん間違えやすいところです。さつまいもを冷蔵庫に入れてはいけません。
さつまいもは暖かい地域の作物で、10℃を下回ると低温障害を起こします。細胞が壊れて、中が黒ずんだり、苦みが出たりします。
正しい保存方法
- 1本ずつ新聞紙で包む(二重にすると安心)
- 常温の風通しがいい場所に置く
- 13〜15℃くらいが理想。冬の暖房のない部屋が向いています
- 洗わない。土が付いたままのほうが日持ちします
この方法で、1〜3か月もちます。冬に常温保存が使えるのは、冬野菜と同じ考え方です。白菜や大根の保存については 冬野菜の保存方法 にまとめました。
カットしたら
切った断面は傷みやすいので、水にさらしてアク抜きし、ラップをして冷蔵庫で2〜3日。この場合は冷蔵で構いません。丸ごとは常温、カットしたら冷蔵と覚えてください。
品種で仕上がりが変わる
同じ「さつまいも」でも、食感がかなり違います。
| タイプ | 品種の例 | 特徴 |
|---|---|---|
| ほくほく系 | 紅あずま | 昔ながらの焼き芋。甘さと旨みのバランスがいい |
| ねっとり系 | 紅はるか、安納芋 | 糖度が高く、蜜が出る。干し芋にも向く |
| しっとり系 | シルクスイート | なめらかな口当たり。中間的 |
店で売っている蜜の出る焼き芋は、たいていねっとり系です。家で同じものを目指すなら、紅はるかや安納芋を選んでください。大学芋や天ぷらなど、形を残したい料理にはほくほく系が向きます。
焼きすぎた、作りすぎたとき
焼き芋は冷凍できます。
- 焼いてから1本ずつラップで包み、冷凍用の袋へ
- 食べるときは自然解凍か、レンジで温め直す
- 半解凍だとアイスのような食感になります
冷凍全般で気をつける点は 食材の冷凍保存でよくある間違い にまとめています。秋の食材つながりでは 新米の炊き方と保存方法 もどうぞ。
まとめ
- 甘さは加熱中に作られる。デンプンが糖に変わる
- 酵素が最もよく働くのが60〜65℃。この温度帯を長く保つほど甘くなる
- 一気に高温にすると酵素が失活する。レンジで甘くないのはこれが理由
- 覚えることは「低温で、じっくり」のひとつだけ
- オーブンは160℃で1時間20〜30分がいちばん確実
- レンジは600Wではなく200Wで8〜15分。濡らしたペーパーで包む
- トースターはレンジと組み合わせる。炊飯器は放っておける
- フライパンならホイルで包んで弱火40分
- 掘りたてより1〜2週間寝かせたほうが甘い
- 冷蔵庫はNG。10℃を下回ると低温障害で黒ずみと苦みが出る
- 保存は1本ずつ新聞紙で包んで常温。13〜15℃が理想。洗わない
- この方法で1〜3か月もつ
- 丸ごとは常温、カットしたら冷蔵で2〜3日
- ねっとり系(紅はるか・安納芋)は蜜が出る。ほくほく系(紅あずま)は料理向き
- 焼き芋は焼いてから冷凍できる。半解凍だとアイスのような食感になる

